
朝起きて、思い立って鎌倉に行った日があった。
午前中、ぽっかりと時間ができて、どこか足を延ばすとしたら、どのあたりまで行けるだろうかと考えていた時に、同僚からおすすめされた。
朝の横須賀線は空いていて、向かいの席に中学生くらいの男の子たち4人が並んでいる。
そのうちの2人は眠そうに肩を寄せ合い、うたたね中。
きっとこの子たちも鎌倉に行くのだろう。ちょっとした遠足気分で大人びた気持ちで男4人。中学生のころくらいの記憶が蘇る。
女の子たちを誘うはずが、なぜか男友達だけでよみうりランドに行った日もあったな。
鎌倉に着いたのは朝の7時を少し回ったくらいで、朝ご飯を食べることができる「朝ご飯」という文字通りのお店に向かう。
カウンターに8席くらいの小さなお店で、女将さんがしらすを入れた卵焼きや、鮭の焼いたやつとかを出してくれる。
常連の女性が、食べ終わったお客さんのお皿を片付けていた。その人は、店の外に並んでいる人に、「次の方どうぞ」と女将さんに代わって声をかける。
なぜかちょうど居合わせたタイミングで、そのお店に小さなカメラを持った取材関係者がやってきて、その常連さんに取材を始める。
「こういう番組を担当すると決まったら、一番最初に来たかったといわれて、そういわれたら取材を断れないじゃない」と女将が笑う。
僕はしらすが入った卵焼き定食に、明太子をご飯の上に乗せてもらう。
先ほどの女性と違う常連さんが、お店で足りなくなったものをコンビニで買ってきて女将さんに渡している。それが何かはわからなかったけど、豊かさとはこういうことかと思い知る。
もう少し言語化するとすれば、やはり信頼ということなのか。
もしかしたら、そこで出される美味しい料理は、その瞬間を切り抜いたものに過ぎなくて、そういうものはお金を出せば、手に入る。
ただ、そこで流れている人同士の信頼関係のようなものは、一朝一夕に作り上げることはできなくて、時間をかけて出来上がったものなのだと感じる。ぽっと来た人がそこに入ることはできない。
そういうことにこそ、価値があり、豊かだなと思うのだ。
帰りに、七里ヶ浜に行き、稲村ケ崎まで歩いて富士山を観ながら温泉につかり、そんなことを思った日だった。
総じていえば豊かだった。