エッセイ

『アメリカとは何か』

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アメリカとは何かという問いは、一時的にせよアメリカ合衆国に住む身としては常に頭にある問いの一つだ。

今年は大統領選。政治的な観点からアメリカについて触れる本を読んでみたくなって手にとった。

アメリカという国は、民主主義、資本主義の実験国家として誕生し、今もなお変容し続けているというのが、この本の根底に流れているアメリカ観だと感じる。

また、アメリカの政治は、2大政党制で政権ごとに主張が全く異なって見えながらも、外交的には内向き志向が強まっていることなど、政策テーマごとに共通点もあり、単純な二項対立では語り切れない。民主社会主義やリバタリアンの台頭によって、右派、左派ともに外ばねの力が強まっていて、従来の中道派が力を失っているというのが筆者の現状認識か。

本書ではトランプ、バイデン両政権の政策、ひいては共和党、民主党の政策の背景や変容に触れているのだが、注目すべきは、人種、ジェンダー、人口に占める若年層の増加など、政治におけるファンダメンタルズともいえる国民の構成要素の変化に応じて、政策は変わっていくし、この国はこれからも移り変わっていくという視点だろう。

アメリカという国の変容は、単に一国の変容を意味せず、国際社会そのもののあり方も変えることになる。日本という国も、それに従って対応を変えざるを得ないのだろう。霞ヶ関を含めてそういうことはきっと皆んなわかっている。アメリカがどのような政権になってもそれに追従するのが是とも思えない。

本書を読んでも、当然のことながら、「アメリカとは何か?」という問いに答えを提示してくれるわけではない。ただ、この国の政治が、アメリカとは何かということを考えながら、その形を創り出しながら進んでいるのだと認識できる。

自らの政治観を主張しすぎず、国のあり方について視座を与えてくれるという点で良書だと感じた。

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