エッセイ

HARLEM Shuffle

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自分が住んでいる都市が舞台になっている小説はそれだけでドキドキする。

『HARLEM Shufffle』は1950年代末から1960年代のHarlemが舞台になっているサスペンス小説。

アフリカ系アメリカ人への差別が色濃く残る公民権運動の時代に、Harlemで暗躍した悪党たちを描いている。悪党と言うとなんだか感じがつかめないが、もはや殺し屋と言った方が近い人物も出てくる。

表向きは家具屋を営む主人公が、裏では悪党やごろつき達との関係を切れずに、むしろそのような輩を主導する面にも触れながら、物語は進んでいく。

僕にとってHarlemは物理的には近いのだけれど、心理的には遠いところだ。Upper Eastに住んでいると言いながら、かなりEast Harlemに近いのだが。

この小説の舞台になっている125丁目あたりも、やはり今でもダウンタウンとは雰囲気が違う。

1950年代、60年代であればなおさらだろうと臨場感を持ちながら読むことができる。

小説自体は3部構成になっていて、最初の2部は最終部の序章ともいえる。読み進めるにしたがって、その当時のHarlemの街の姿、夏のけだるいような暑さを所与のものとして想像できるのも面白い。

最後のクライマックスは、ここでは直接的には書かないけれど、物語の締め方としては司馬遼太郎の『梟の城』のような感じがした。

今年はHarlemにゴスペルを聴きに行きたいと思っている。その前に読むには、ちょっとダークな面が見えすぎる小説。でも、それもHarlemの歴史の一部なのだから、読んで無駄なことはない。訳文もリズミカルというかダークさが出ていて秀逸だと感じた。

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