エッセイ

キッチンの窓

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キッチンに、目の前の通りを見渡せる窓がある。料理をしていても開放的だ。

通りを挟んで向こう側に、「いわゆるアメリカのアパート」という感じの外階段付きアパートがあって、夕方になると灯りがともって、なんとなく部屋の様子がよくわかる。生活感を感じられて、落ち着きを与えてくれる。

「マンハッタンは、建物が密集しているがゆえに、アパートは外から見えてプライバシーがない。でもそれが都市ってことなんだ」と、この間、とある物件を見に行ったときに管理人が言っていた。

僕の家のキッチンの向こう側は、浴室とトイレになっている。シャワーを浴びた後に、あまり外とかを気にしない格好で、一杯飲むのが幸せだったりする。

僕はある日、キッチンの窓のブラインドを全部上げてしまいたい衝動にかられた。天気が良い日だった。繰り返しだが、とても開放的なのだ。

ブラインドを上げたのはいいのだが、どのように下ろしたらよいかわからないことに気づいた。でも、いいじゃないか、向かいの人だって全開にしている。

その日はそういう気分だったし、それから何日も放置していた。でも、段々、気になり始めた。このブログに書いているように、天気が良くない日だってあるし、プライバシーがないといっても、自らそれを誘発すべきではないだろう。

いてもたってもいられなくなって、ブラインドのひもを上げ下げしてみたが、いっこうに下がってこない。無駄に汗をかく。この時期のNYは暑くなり始めている。ネット記事や動画を見ると、似たような症状を克服した人たちが投稿している。どうやら、ブラインドの一番下の真ん中部分を引っ張るようなのだが、これもダメ。

仕方なく、今日、ついに決断した。

管理人に頼ろう。場合によってはチップも渡そう。

管理人が来てくれた。僕は実はその時、会議中だったので、ブラインドが下りるのを見逃してしまった。あまりの作業の速さに、やり方がわからなかった。あの人たちは、予期せず訪れるのだ。

でも、今のアパートは、Webで修理履歴を残してくれる。これは日本にも導入したほうがいいサービスだ。修理履歴だけではなく、屋上のスペースの予約や、要らなくなった日用品の投稿までできる。

その掲示板には、管理人から丁寧にやり方の説明が書かれていた。一定角度、左にひもを保つと、ブラインドが下りてくるらしい。あと、こう付け足してあった。

 I also recommend you do not pull the blind up 100 % leave a little from the top so it does not get stuck.

Carnegie hillのマンション管理人

上げすぎるとよくないのだという。はじめに言ってもらいたい。

でも感謝しかない。ブラインドは採光角度だけ調節することにしたい。それだって十分に開放感を得られるんだ。

The blind in my kitchen

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