エッセイ

歯を磨くように

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NYにゴルフバックだけは持っていこうと決めていた。同僚も含めて、知らない人と仲を深めるうえで、ゴルフはコミュニケーションツールになる。

そういうことは、わかっていながら、まずは生活を落ち着けることが先決だと思っていた。

春になって、生活が落ち着くのと並行してゴルフを始め、それからなんのかんの3か月ほど。だいぶゴルフ自体の調子も上がってきた。

それは、いいとして。

先日、少し上の先輩が、どうしてもゴルフをしたいというので、連日お付き合いした。

ゴルフの腕はさておき、その人は、クラブを新しく自分で買ったので、クラブを磨くことを心掛けているという。

僕も、クラブを磨くということを大事にしたいと思っていたころがあり、今でも習慣的に、クラブを磨いている。だけれど、連日ゴルフとなると、2日目の前にはそれを怠りたくなる。

今回、実はそのクラブ磨きの話を少し前に聞いていたので、この人はきっとクラブを2日目も磨いてくるのだろうと勝手に想像していた。

案の定、彼は磨いてきていた。僕も磨いていた。なんだか、磨いていてよかった気がした。

やっぱり愛着があるんだよね、自分のものだから。

先輩の同僚

何を隠そう、僕も自分で買ったクラブなのだ。フィッテイングまでしてお金をかけている。だけれど、しばしばその愛着というものを忘れがちだ。

日本とアメリカの違いの1つとして、アメリカではゴルフ場の従業員が、クラブを拭いてくれるという習慣がない。パブリックにばかり行っているからかもしれない。

この間、カートを片付けるお兄ちゃんが、クラブを磨いてくれた。それはそれで感動した。こういうサービスもあるのかと。それでも、僕は家に帰って、クラブを磨きなおす。それでいい。

今日の題名を「歯を磨くように」としたのだけれど、クラブを磨くことばかりを書いている。

歯を磨くようにというのは、僕の中でのゴルフのテーマだ。

海外だろうが、どんなに偉い人とゴルフをしようが、友達との久しぶりの楽しいゴルフだろうが、特別だという感覚をできるだけ、忘れて、「歯を磨くように」。

「今日もゴルフをするのがあくまで日常のことなのだ」と、クラブの握り方など、まったく意識せずに、あたかも、歯ブラシを持つのを何も意識しないように、ゴルフをしたい。

NYでも、僕はこうやってゴルフをしたいと思っている。歯を磨くようにとまではいかないけれど、とりあえずクラブを磨いて。

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